研究概要 |
1.目的 超音波の非熱作用であるキャビテーション作用を利用して、効果的な腫瘍細胞の死を誘導する。 2.方法 (1)抗CD20モノクローナル抗体(rituximab)と超音波照射併用による細胞死の誘導:細胞表面にCD20抗原を発現しているSU-DHL-4細胞を用いた。低濃度(0.1μl/ml)のrituximabを添加し、1MHzで0.25Wおよび0.5Wの超音波を20秒間照射した後さらに培養し、細胞増殖状態、細胞死について観察した。また、細胞死の機序について検討するため細胞内カルシウムイオン濃度を測定した。 (2)超音波増感剤の細胞死誘導に関する検討:増感剤(Levovist, Optison, YM454)の超音波誘導細胞死に与える影響についてU937細胞を用いて検討した。 (3)少量抗腫瘍薬と超音波照射併用による細胞死誘導に関する基礎的検討:白血病細胞に対するアポトーシス誘導効果が知られている亜ヒ酸を用いて、各種培養細胞での細胞死の機序について検討し、超音波併用療法への基礎的検討を行った。 3.成果と今後の展開 (1)超音波照射とrituximabの併用効果:低濃度の抗体と低い超音波強度の併用により細胞死が誘導されたが、相乗的効果は認められなかった。しかし、著明な細胞の増殖抑制効果がみられた。今後、効果的な併用条件を探るか、あるいは併用効果には一定の限界があるのかについて、検討する必要がある。なお、細胞内カルシウムイオン濃度は、併用により明らかに上昇し、細胞膜の変化を窺わせる結果であった。 (2)超音波増感剤との併用:OptisonとYM454でアポトーシスの効果的な誘導がみられた。 (3)亜ヒ酸の細胞死誘導効果:細胞によりアポトーシスあるいはオンコーシスが誘導され、細胞種によって死に方に差異のあることが明らかになった。 今後、各種抗腫瘍剤で検討を試み、効果的な薬剤送達システムの開発を行う予定である。
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