研究概要 |
本研究の目的は市販の超音波装置を用いて,局所脈波速度を計測するシステムを開発することであった. 従来の脈波計測は大動脈をはさんで離れた2点間の平均脈波速度を計測するものであるため,局所の情報に乏しいことと,特別な装置を必要とするあるため,経済的にも経費がかさむという問題があったが,我々の開発するシステムはこれらの問題を解決する方法となることが期待された. 計測システムは,血管径をエコートラッキング法により,流速をカラードプラ法により同時計測するという超音波装置ならではの利点を活かしたものである. 平成16年で計測システムはほぼ完成していたが,ソフト細部にいくつかの問題がみつかり,その改良1年以上費やした. 他の装置との比較をするため,フクダ電子社製のVaSera VS-1000を使用して計測し,データを比べてみたところ,高血圧症例のなかで,必ずしも二つの脈波速度による動脈硬化の進展の評価が一致しない例が認められ,局所と大動脈2点間の脈波速度に違いがあることが推測された. また,この装置は心血管系の動作状態を示す,新しい心機能指標Wave intensityも同時に計測することが可能であり,心機能と血管系機能の相互作用を新しい角度から研究することが可能である. 最終年度は健常者と高血圧症例に冷水負荷を行い,その反応の違いを計測して,自律神経反応を含めた血管機能の検討を行い,ヨーロッパの心エコー学会で報告した(9th Annual Meeting of the European Association of Echocardiography : Differences in the cold pressor response between patients with hypertension and normal subjects : wave intensity analysis.) また,ニトログリセリン投与時の変化を調べて論文発表を行なった.
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