研究概要 |
当研究は、次世代超音波造影剤対応の超音波内視鏡装置を開発し、消化器系臓器の微小循環動態の観察法を確立することを目的とした。平成15年度および平成16年度では、次世代超音波造影剤対応の造影ハーモニックモードを開発した上で、超音波内視鏡用小型探触子を作製し、犬における消化器系臓器の血行動態を観察した。平成17年度は、犬における膵癌の実験的モデルとしてラジオ波にて膵の一部を焼灼することにより乏血性病変を作成し、同部位の血行動態の観察に成功した。即ち膵癌の微小循環動態が観察可能であることが示唆された。また、本研究機関中、機器開発と同時に、造影ハーモニックエコー法の臨床的有用性を検討した。体外式造影ハーモニック超音波検査を用いて膵腫瘍性病変の存在、質的診断および治療効果判定、さらに消化管粘膜下腫瘍の悪性度評価に有用であることを証明した(Gut 2004,53,854-859;J Gastroenterol 2006,41,70-76;J Gastroenterol 2005,40,247-255)。本邦において、次世代造影剤が未だ許可されないため、平成18年1月より、SonoVueの臨床使用が認可されているドイツBethesda総合病院との共同研究を行った。膵・胆道系腫瘍が疑われた患者に対して造影ハーモニ'ック超音波内視鏡検査を行い、造影剤投与後のリアルタイム画像と間欠送信画像を評価した。膵腫瘍性病変および消化管聞葉系腫瘍において、リアルタイム画像では微細な腫瘍内血流が観察され、間欠送信では実質染影像が得られた。このドイツでの臨床研究により、従来の超音波内視鏡では不可能であった造影ハーモニック法の臨床応用が可能であることが証明され、消化器系疾患の診断に有用であることが示唆された。
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