研究概要 |
ポルフィリン類はレーザー光を用いた光線力学的治療法(PDT)として癌治療の研究と臨床に利用されている。その理論は、癌組織中に活性酸素を生成させ壊死させるものである。この活性酸素の生成は、超音波にても惹起される。レーザー光は組織内到達距離が浅いが、超音波は組織深部まで到達することより、超音波を用いた治療法(超音波力学的治療法,sonodynamic therapy : SDT)の基礎的研究がなされてきた。今回の研究は、このSDTを臨床応用することを目的に行った。 対象症例:本研究費を使用しSDTを施行した症例は、深在癌である消化器癌局所再発の1症例であった.SDTを行うにあたり使用した超音波は、0.9MHzの超音波発信装置を用いることでボルフイーナトリウムの励起を行える超音波特性を有するものを準備した.この超音波発生装置を用いて十なインフォームド・コンセントのもとに直腸癌局所再発例の1症例に臨床応用を行った. 実施方法:超音波力学的治療法に使用するボルフイマーナトリウムは、体重あたり2mg/kgを静脈投与した.このボルフイマーナトリウム1パイアルは75mg/kgであり、患者には2パイルが必要であった。ボルフイマ←ナトリウムは光感受性薬剤であるため、静注後よ50ルクス以下暗室個室に収容し、静注後48時間から72時間の間に重畳波超音波を同一部位に2回照した.照射後1週間300ルクス以下の暗室個室管理を行い、光過敏反応(手背を太陽光に5分間曝し、発赤の有無を見る方法)をみて2週間後に退院した。 効果判定:副作用、自覚症状、画像静断(CTと超音波検査)、腫瘍マーカー測定などを行った。結果は、副作用については何ら認めず、自覚症状は治療前の下腹部痺痛の軽減が認められた.画像診は治療直後であり、超音波検査のみの結果であるが、腫瘍内部の構造変化が認められた。 小括:超音波力学的治療法の副作用は認められず、安全に施行しえた。効果に関しては単回の治療であり、劇的な効果の確認はできなかった。今後、反復投与とその症例集積が必要と思われた。
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