研究課題
空気中マイナスイオンは、自然界では森林・温泉地・滝周辺などの保養地に多量に認められ、仕事能率、疲労度への有用性が報告されているが、過去の報告では自覚症状など客観性に乏しい分析が多かった。今回の検討では、健常人男子学生を対象に、25℃湿度50%の恒温室にて二重盲検法を用いて、人の疲労度、作業効率、発汗量の減少に示される交感神経系緊張度、中国鍼による疼痛などリハビリテーション診療施設で用いられる指標で検討した。マイナスイオン発生器は、市販のイオン発生器(松下電工製、東芝製、山武製)を用い、空気中イオン量を計測し機器を配置した。冷水負荷後の皮膚温変化、スキノス社SKD-2000による局所発汗量、エルゴメータを用いた最大運動量、手非経穴部への鍼穿刺による疼痛量・局所発汗量を検討した。マイナスイオン暴露では計算試験、逆唱試験などのHDS-R(長谷川式痴呆スケール)による局所発汗量の低下が示され、鍼刺激による疼痛VASと局所発汗量は低下し、交感神経系緊張緩和作用を示した。冷水負荷試験では、マイナスイオンが冷水負荷後の回復を速め、交感神経緊張を和らげる作用を示した。血液検査では、内分泌学的なストレスホルモンであるコーチゾルの有意の低下、免疫学的な指標であるNK細胞数の有意の低下を認め、すべて、マイナスイオンが交感神経系機能亢進を抑制し、ホルモン学的、免疫学的なストレス抑制作用が示された。エルゴメータを用いた最大酸素消費量計測では、マイナスイオン暴露群がコントロール群より有意の上昇を示した。以上より、マイナスイオン暴露は、リハビリテーション医療で用いる長谷川式痴呆スケールやVisual analogue scaleや、呼気ガス分析装置によりその有用性を示され、意欲や熟達度の改善をもたらす作用が示唆された。今回の検討は健常人のみの検討であり、さらに倫理的な検討を加えたうえで、空気環境が、通常訓練の効果を高める可能性について検討を進めていきたい。
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