1 仮想エコーロケーション音と姿勢動揺との関係 これを達成するために聴取者の足下及び前方にスピーカを設置し白杖によるタッピング音に類似した合成音を時間遅延させて提示した。遅延時間が短くなるほど足下のスピーカ音と前方のスピーカ音とが弁別しにくくなり最後には融合する。 これが壁面の接近と後退の手がかりとして利用されていれば、姿勢動揺が生起するはずである。実験条件は5条件とされた。(1)仮想タッピング音が前方方向で接近と後退を繰り返す条件、(2)仮想タッピング音に仮想壁のピンクノイズを付加して前方方向に接近と後退を繰り返す条件、(3)仮想タッピング音が右側方向で接近と後退を繰り返す条件、(4)仮想タッピング音に仮想壁のピンクノイズが付加された右側方向で接近と後退を繰り返す条件、そして(5)音刺激がない条件であった。 結果、姿勢の動きが最も大きく周期的であったのは仮想タッピング音に仮想壁が付加され多条件であり、しかも、前方方向よりも右側方向での条件で顕著であった。しかし、仮想タッピング音のみの条件でも身体の同様と周期的な動きは認められた。ただし、どの条件においても、個人差が認められた。そして、予想通り無音の条件では姿勢の周期的な動揺は見られなかった。 これらのことより、仮想タッピング音のみにおいても、身体の動揺の周期的な現象が生起することが明らかとなった。 2 仮想開口部提示システム 仮想壁提示システムと動揺にピンクノイズを使用して聴取者を中心として6台のスピーカを用いて仮想開口部を音響的に作り出すことを試みた。反射は全反射、反射角度は90度に限って提示した。盲人に開口部を認知できるかどうかを評価してもらったところ、明確な開口部は聴取できないということであった。 これは、開口部をあらわすために相関のないピンクノイズを使ったため、両側の仮想壁の相関のあるピンクノイズとマスキングしあってしまったためと考えられる。 今後、仮想開口部の提示についていっそうの検討が必要である。
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