まず、昨年度までに筆者らが作成した、12項目からなる「談話評定法試案」について、昨年度の結果から評価法を「5段階評価」のものとし、この評定法の信頼性を高めるための改訂および使用法マニュアルの充実をはかった。すなわち、各項目の評価段階について具体例を付加して段階評定の基準を明確化した。この改訂版についての信頼性の再検討は、来年度の課題として残った。 次に、「談話評定法試案」の結果と痴呆の重症度との関連性については、中〜重度例を含む幅広い重症度について、昨年度までに追加的に収集したアルツハイマー病患者のデータから確認することができた。すなわち、AD患者21名(MMSE24点以上が2名、23〜10点が10名、10点未満が9名)に対し、談話評価とMMSEを施行し、談話評定結果とMMSEの相関をSpearmanの順位相関を用いて検討した結果、会話場面での相互関係に関する3項目を除くすべての項目において5%水準で有意な相関を認めた。談話評定項目に表れる特徴の多くはMMSEによる全般的認知機能の程度と関連していることが確認されたが、会話場面の相互関係に関する項目については関連は明らかではなく、他の要因の関わりが推測された。 さらに、来年度の研究に向けて、コミュニケーションを促進するための介入法について、回想法などの個々の介入プログラムから全体的な認知-コミュニケーションへの刺激プログラムまで、文献を調査した。こうした中から、安田ら(2004)の「思い出写真ビデオ」を参考に、パソコンを用いて対象者に合わせた視聴覚刺激を提示する介入プログラムの試作を行った。
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