研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、まず、平成11年度〜平成14年度の科研費研究で開発した「談話評定法試案」をより使いやすいものに改良し、信頼性と妥当性を検討することにあった。さらに、患者の持つコミュニケーション障害を検出するという視点に加え、臨床の現場で有用な評価ツールになりうるか、さらに、評価にとどまらず、リハビリ的介入を行う際の効果をみるためのツールとなるか、そのためにはどのような観点を加えるべきかを探ることであった。まず、「談話評定法試案」と同一の内容で、より評定がしやすく、信頼性が向上すると考えられる別の評定法を作成し、比較検討を行った。信頼性および評定者の意見、両方の点で大きな差は認めなかった。次に、妥当性の検討として、幅広い重症度のアルツハイマー病患者に対し、認知機能障害の指標として、談話の評価とMMSEを並行して実施し、その関連性を検討した結果、多くの項目で高い相関を認めた。また、認知症におけるコミュニケーション障害について文献レビューを行い、介入研究への足がかりとした。さらに、臨床現場で有用な評価ツールへと発展させることを目的に、わが国の言語聴覚士による認知症臨床の現状を明らかにした。検査が実施できないことや環境によって状態が変動することからくる評価の困難さ、介入の内容や効果についての疑問といった問題点が浮かび上がった。最後に、介入の試みとして「思い出スライドショウ」を試作、試用した。予備実験段階ではあるが、このツールを使うことによって記憶が喚起され、表出される部分があること、また、場面により会話の状態が異なることがわかった。本研究を進める中で、場面や相手などの環境が談話に大きく影響を及ぼす点が認知症の特徴でもあることがより明らかになった。今後は、聞き手や場面による相違を明らかにする評価法として、よりよいケアのための有用なツールとなるよう、さらに発展させたい。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
県立広島大学保健福祉学部誌 人間と科学 7 (1)
ページ: 83-99
Humanity and Science, Journal of the Faculty of Health and Welfare, Prefectural University of Hiroshima 7(1)