研究概要 |
本研究の目的は、脳外傷患者の認知・コミュニケーション障害の病態およびその障害が社会的予後に及ぼす影響を明らかにする共に、その結果に基づき「脳外傷談話機能検査」の開発を進めることにある. 方法は、脳外傷患者23名の談話機能および認知機能を半年〜2年間に渡って追跡評価し、その回復過程と社会予後との関係を分析した.同時に、「脳外傷談話機能検査(試案)」を脳外傷患者23名および健常者30名に実施し、そのデータを解析することにより検査の完成化を図った. 本研究で得られた結果は下記のとおりである. 1.脳外傷患者はnarrativesの基本概念を表現する文の発話が健常者より少なく、誤りも多かった.特に、事象間の関係を推測する文の発話が少なく、情報を統合することが困難と考えられた.このような特徴は言語聴覚療法の進行と共に回復するものの、数年経過しても症状は残存した. 2.脳外傷患者は三宅式記銘力検査、Rey Osterreith複雑図形検査、Wisconsin Card Sorting Test,7seriesで測定されるエピソード記憶、遂行機能、ワーキングメモリーの障害を呈した.脳外傷談話機能検査の得点はこれらの検査成績と有意な相関を示し、談話機能障害にはエピソード記憶、遂行機能、ワーキングメモリーの障害が関係すると考えられた. 3.脳外傷患者の社会的予後と談話機能は密接な関係を有することが明らかとなった. 4.健常者および脳外傷患者のデータ解析から、「脳外傷談話機能検査」は脳外傷患者の談話機能を評価するうえで有用な検査であることが確認され、検査の完成版を作成した. 今後は、本検査の標準化作業に取り組むこととする.
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