本研究の目的は、(1)運動障害者のインスリン抵抗性が、短期間での全身持久力訓練によって改善するか否かを検討すること、(2)運動障害者のインスリン抵抗性が長期の経過の中でいかに変化するかそしてその変化に影響を与える因子を検討すること、の2点である。 (1)運動障害者のインスリン抵抗性の改善に対する短期間での全身持久力訓練の効果 HOMA指数でインスリン抵抗性有りと判定された運動障害者11例を対象として、通常のリハ訓練(PT/OT)を3-4週間行い、その前後でHOMA指数の変化を検討した。その結果、約3-4週間の間隔で評価されたHOMA指数には、統計学的に有意の差は認められなかった.この結果から、運動障害者に対して通常施行されるPT/OTでは、3-4週間という短期間ではインスリン抵抗性に変化を及ぼさないことが示唆された.これに対して、通常のリハ訓練(PT/OT)に加えて自転車エルゴメータを用いたATレベルでの全身持久力訓練を行った運動障害者7例では、3-4週間での全身持久力訓練前後でHOMA指数に有意の改善が認められた。この結果から、ATレベルでの全身持久力訓練は、短期間でインスリン抵抗性の改善をもたらすことが明らかとなった。 (2)運動障害者のインスリン抵抗性が長期の経過の中でいかに変化するか 本研究期間中にインスリン抵抗性有りと判定され、その後6ヶ月以上経過観察が可能であった運動障害者11例が対象例である。経過中、2例においてインスリン抵抗性に改善がみられ、1例で増悪したインスリン抵抗性が改善した2例では肥満度に改善がみられたが、増悪例では肥満度の改善が得られなかった。以上の結果から、運動障害者におけるインスリン抵抗性改善に対する長期的対策としては運動習慣や食習慣の改善を通した肥満対策が重要であることが示された。
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