研究概要 |
少子高齢化の加速を受け,深刻化する介護者不足の問題に対処するため,ロボットの導入が期待されている.よりよいサービスをロボットが行うためには,ロボット使用者とロボットとの円滑なコミュニケーションが重要となる. 本研究ではロボット動作で人に感情を伝えるというコミュニケーションの実現をめざし,ロボットの運動軌跡が人間にどのような印象を与えるか調べるとともに,どのような運動軌道が望ましいかを検討した.まず,動作の特徴抽出実験において,物の差し出し動作を例にとり,「平静」,「親しみ」「怒り」の3つの感情をもって両前の他人に物を差し出す動作を分析した.動作計測実験から,動作の最高変位,終端速度に感情が表れることを明らかにした.また,動作を正面から録画したVTRを主観評価させたところ,怒りの印象は動作全体の速度および終端速度と関係があることも明らかとなった. ロボット動作で人に感情を伝えるというコミュニケーション実現を目指し,日本人とフランス人という文化的背景が異なる2つのグループを対象に動作計測実験,主観評価実験を行い,2つのグループ間の相違を明らかにした.両グループに共通して,怒りの印象は動作全体の速度および終端速度と関係がある一方,親しみ印象と物を持ち上げる高さとの関係は文化の差異により違いがあることを示した.日本人の動作特徴を反映したロボット動作(CG)の主観評価実験において,物を差し出す者,受ける者の位置関係の違いは動作印象に影響を及ぼすことか明らかとなった.これらの知見は今後,対人サービスロボットの利用における軌道生成やロボットとヒトの位置関係を決める際の指針を与えるものである.
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