研究概要 |
平成15年度は当該2年計画研究開始の初年度で、書字運動解析のシステムを構築し、健常者を対象に実験を行った。システムは身体各部の三次元位置センサー、関節角度を示す多軸ゴニオメータ、表面筋電計で、各センサー情報をメモリー上に記録するものであり、初年度は各センサーの動作確認を行った上で、書字動作の三次元位置解析に焦点をあてた。健常成人10名を対象に左右の手で、1.2,3.5,9.5cm角の3種類の大きさの平仮名「ふ」を、初めに各人の自由な書体(普段書いている書体)で、次に手本書体をなぞらせて、各々10字、合計1200字を記録し、自由書字となぞり書字の特性の違いを主題として検討した。評点はペン先、示指MP関節、橈骨遠位端の3ヶ所で計120Hzのサンプリングを行った。オフラインにて、汎用数値解析ソフトウェアMatlab(Cybernet社製)を用いて、書字時間、各点の軌跡長、運動半径の3つのパラメータを計算した。なお、各パラメータともペン先が紙面に触れている期間のデータを対象にし、字の粗さを補うためにスプライン補間し、各サイズとも同じ数の等間隔の点の集合として扱った。 自由/なぞり書字に関わらず書字速度は字体が大きいほど速いが、サイズによる速度変化は利き手の自由書字で大きく、利き手の通常サイズ(小さな字)での自由書字における習熟性を示す結果と解釈できた。運動半径については、利き/非利き手に関係なく、大きなサイズでは各評点は一塊となって動いているが、利き手の小さなサイズの自由書字では遠位部の独立した運動で書いていることがわかった。つまり、利き手の習熟した書字運動は時間的に効率がもっともよい動きであり、それは遠位部の独立した運動で成り立っているといえる。なお、以上の結果は第41回日本リハビリテーション医学会(平成16年6月3-5日、東京)での口演発表が受理されている。
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