研究課題/領域番号 |
15500385
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
千野 直一 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90051531)
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研究分担者 |
正門 由久 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (10173733)
里宇 明元 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (60146701)
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キーワード | 脳卒中 / 片麻痺 / 痙縮 / 筋再教育 / ペダリング |
研究概要 |
脳卒中片麻痺患者において、共同運動や痙縮の存在は、歩行中に必要な筋を適切な時相で活性化させることを妨げ、歩行障害をもたらす。ペダリング運動は、歩行などの両脚交互運動のモデルとして注目され、立位・歩行が困難な重度片麻痺患者の筋再教育の手段として有効な可能性がある。ペダリングが、麻痺側下肢筋活動の促通と選択的・相的な活性化に有効であるという仮説を検証するために本年度は以下の研究を行った。 【方法】慢性期脳卒中片麻痺患者17名(発症後3か月以降、SIAS膝伸展スコア2/5以下)を対象とした。StrengthErgo^<TR>上で座位をとらせ、膝関節最大伸展時に伸展角度が-10°になるようにシート高、位置を調整し、バックレストとシートベルトで体幹を安定させ、以下の測定を行った。1)麻痺側の随意的膝伸展時の筋活動を表面電極で記録。2)5分間の休憩後、負荷量5Nm、等張性モードで、安楽な速度で5分間、ペダリングを実施。3)90°ずつ4相に分け、各相の大腿四頭筋、内側ハムストリングス、前脛骨筋、内側腓腹筋の筋活動積分値を表面電極で求め、各相の筋活動量の全サイクルの活動量に対する%を比較。4)麻痺側膝伸展時の大腿四頭筋筋電積分値をペダリング前、直後、30分後に測定。 【結果】1)ペダリング中に麻痺側下肢の伸筋群と屈筋群に非麻痺側とantiphasicな相的筋活動が誘発された。2)ペダリング中の大腿四頭筋と前脛骨筋の筋活動は、随意的膝伸展時より有意に増加し、ハムストリングスは不変、腓腹筋は減少していた。その効果は、ペダリング終了後30分後にも観察された。 【結論】ペダリングにより、重度片麻痺患者の下肢に相的かつ協調的な筋活動が誘発され、筋再教育の手段として有効な可能性が示された。今後、その効果の神経生理学的機序の解明およびランダム化比較試験による治療手段としての有効性の検証を行う予定である。
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