両脚交互運動のモデルとして注目されているペダリング運動の麻痺側下肢筋に対する促通効果を検証するために、H18年度は以下の研究を行った。 1.駆動条件に関する基礎的研究:より選択的、効果的な促通のための駆動条件を明らかにする目的で、健常人5名を対象に、等張性モード、3Nmの負荷で、駆動速度、ピッチ音、肢位の変化が下肢筋活動と関節角度に与える影響を評価した。その結果、1)駆動速度の増加によりすべての被検筋の活動量が増加したが、筋活動パターンの変化は、大腿直筋と内側ハムストリングスのみにみられた。2)ピッチ音のとりかたは筋活動パターンには変化をもたらさなかったが、筋活動量はピッチ側のヒラメ筋、内側広筋、内側ハムストリングスで増加し、腓腹筋内側頭で低下した。3)最大膝伸展角度の変化に伴い、大腿直筋では屈曲角度が強まるほど、1周期における活動開始が早まる傾向を示した。筋活動量は腓腹筋内側頭、内側ハムストリングスにおいて屈曲角度の増加とともに、著明に減少した。以上より、健常者において駆動条件の違いが、筋活動や下肢関節角度に影響することが示され、片麻痺例においても駆動条件の変化の影響を検討する必要性が示唆された。 2.ランダム化比較試験(RCT)による効果の検証:慢性期脳卒中片麻痺患者を対象に、ペダリングの効果に関するRCTを行った。介入群では、等張性モード、負荷5Nmで任意の速度でペダリングを1日1回、7分間、週4-5回、4週間、対照群では、麻痺側膝関節屈伸を任意の速度で行わせた。ベースラインと介入4週後に、麻痺側ヒラメ筋Hmax/Mmax、歩行指標、両下肢筋活動、3)運動麻痺(SIAS)、痙縮(modified Ashworth scale)を評価した。予備的解析では、介入群において上記指標の一部に改善が示唆されているが、引き続き、トライアルを継続中である。
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