褥瘡発生には圧迫が主因子として知られているが、近年はせん断応力も大きな影響を持つことが明らかになりつつある。そこで、本研究では、昨年度開発された圧迫力とせん断応力のコントロールが可能で同時に血流量計測も可能な圧迫-せん断応力制御装置の精度向上を目指し、せん断応力測定用ロードセルの位置変更とばねによる予圧を追加した。また、改良後の制度検証のための基礎実験を行った。 具体的には、せん断応力発生のためのスライド運動機構の力学的解析を行い、昨年度システムでヒステリシスが発生している原因を解明するとともに、この対策としてロードセル取り付け位置を皮膚接触部付近とし、さらに、反対方向から圧縮コイルばねで常に予圧を与えている状況となるようよう機構の再設計・試作を行った。圧縮コイルばねについては、数種類を用意し、最適なばね定数のものを選択した。以上の改良を行った後に、精度検証のための基礎実験を実施した。その結果、昨年度問題となっていたせん断応力のヒステリシスがほとんど解消され、直線性の高いデータを得ることが可能となった。このデータを用いてせん断応力をコントロールすることが可能となり、昨年度の定性的な評価から、定量的な評価を行うことが可能な装置が完成した。システムの評価のために、せん断応力フィードバックプログラムを開発し、生体への軽度の圧迫及びせん断応力を加えたときの血流挙動を計測する簡易実験を実施したところ、せん断応力が血流に及ぼす影響を確認することができた。
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