研究概要 |
褥瘡発生には圧迫が主因子として知られているが、近年はせん断応力も大きな影響を持つことが明らかになりつつある。本年度は、昨年度までに開発した圧迫力とせん断応力のコントロールが可能で同時に血流量計測も可能な圧迫-せん断応力制御装置を用いて、ヒトの仙骨部に負荷を加えた場合の生体への影響について血液をパラメータとした計測実験及びこの解析を行った。 具体的には、仙骨部に圧迫のみを加えた場合(6kPa,10kPa,14kPa)と、圧迫とせん断応力(4.5N)を同時に負荷した場合に血流の反応性充血がどのように変化するかについて実験及び解析を行った。その結果、以下が得られた。 1.圧迫力を大きくするに従って反応性充血も大きくなり、生体に対して負荷が大きくなっている。 2.圧迫力とせん断力を同時に負荷することにより、反応性充血がさらに大きくなる。 3.圧迫力の大きさを大きくするよりも、せん断力を負荷した方が反応性充血は大きい。 4.圧迫力が小さい時には、せん断力の影響は現れない。 これらの結果から、褥瘡の発生にせん断力が関与していることは明白であり、褥瘡予防のためには圧迫のみならずせん断力(ずれ力)に注意をはらう必要があることが示唆された。一方で、圧迫が小さい場合にはせん断力が発生しないことも確認されており、生体への圧迫を分散することでせん断力も回避できることも明らかとなった。
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