研究概要 |
研究の目的:ヒトにおける,運動野への反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)による感覚閾値の変化を明らかにすること. 実験1 健常者での検討 1.対象と方法:健常者10名(男性5名,女性5名,平均年齢±標準偏差,35.8±5.7).rTMSは左短母指外転筋を標的とし右運動野に施行.90%安静時運動閾値の強度,0,9Hzの頻度で500回刺激した.前後で電流感覚閾値(CPT)を測定し,その変化について検討した.比較として感覚野へのrTMSとsham刺激を施行した. 2.結果:2kと5Hz CPTに有意な上昇を認めたが,それは正常範囲内での変化であった.感覚野へのrTMSとsham刺激で変化はなかった. 実験2 脳損傷患者での検討 1.対象と方法:56歳女性.左前頭葉の慢性期脳外傷患者.rTMSは右短母指外転筋を標的とし対側の運動野に健常者への施行時と同様に行った.前後で2kと5Hz CPTを測定した. 2.結果:各CPTはともに低下した. 結論 2kHzCPTはAβ線維の閾値を,5HzCPTはC線維の閾値を示し,それぞれ触覚と鈍痛覚といった感覚機能に関わる.すなわち,rTMSは健常者に対し触覚および鈍痛覚を鈍麻する方向さ変化させると考えられる.ただし,それは正常範囲内での変化であり,ヒト健常者における閾値下低頻度でのrTMSの安全性を示唆している.一方,脳損傷患者を対象とした実験は対象が限られており,現時京では結論に至っていない.
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