摂食・嚥下障害の中で、舌による食塊の口腔後方への送り込みが困難な症例や、口腔期と咽頭期での嚥下関連器官の連携が困難な症例がみられ、特に重症例に対して徒手的な治療手技を中心とした嚥下訓練のみでは難渋することも多い。そこで、四肢筋群に使用されてきた低周波治療を嚥下障害にも導入し、低周波により外舌筋と舌骨上筋群を他動的に筋収縮させ、末梢感覚からのフィードバックにより、嚥下関連筋群の協調運動を回復させる方法が有効ではないかと思われる。そこで今回、低周波による嚥下関連器官の動態変化を内視鏡的に分析することを目的に研究を行った。 平成15年度においては、すでに保有していた鼻咽喉ファイバースコープ(OLYMPUS ENF-P4)にビデオシステム(OLYMPUS OTV-SC)を組み込み、ビデオ内視鏡システムを構築し、画像処理能力を向上させ、病態分析と訓練方法の有効性の客観的評価を可能にした。本学の主研修病院である新潟リハビリテーション病院の摂食・嚥下障害患者14名を対象に、摂食・嚥下時における鼻咽腔閉鎖動態と、嚥下関連器官の動態変化を観察し記録した。また、'健常成人を対象として、低周波治療器(日本メディックスTrimix202H)を使用して、オトガイ下から甲状軟骨までの間に、正中をはさんで両側平行に低周波(SSP)電極を装着し、3〜100Hzの通電による舌根、咽喉頭部の動的変化を内視鏡的に観察した。その結果、通電に伴い、舌根部の軽度挙上、喉頭蓋の翻転傾向、披裂軟骨の内転運動、梨状陥凹の拡大が認められた。低周波治療により嚥下反射を誘発することは困難であったが、舌骨上筋群を主体として嚥下関連筋群を反復的に筋収縮させ、嚥下の前段階にまで誘導することが可能であった。本法が口腔期や咽頭期における嚥下障害の改善に有効である可能性が示唆された。 平成16年度においては摂食・嚥下障害患者を対象に本法を行い訓練過程での嚥下動態を内視鏡的に分析する予定である。
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