平成15年度は各種信号の入出力系統の整備をおこなった。データ採取のための基本タスクは市販の絵カードがある構音検査用の中から選ぶほうが普遍性を有すると考え、口唇破裂音の[p]、[b]、[m]と母音は[a]を含む単語を中心に採用した(/panda/、/bas*/、/ka*i/、/ke:ki/、/sakana/、/rappa/、/a∫i/の7単語)。年度末に渡米し、海外共同研究者のMoore博士と入出力系統の妥当性と、分析方法について打ち合わせをした。 平成16年度は、まずデータの採取をすすめ、8人の正常発達の過程にある幼児の協力が得られた(2歳台3名、3歳台1名、5歳台3名、6歳台1名)。サンプルをPCに取り込み分析した。以下、分析結果を列挙する。 1.破裂後50ミリ秒の母音部分におけるF1、F2:8名の中での年齢による差異を検討したが、明らかな差を捉えることはできなかった。 2.1のポイント以降の母音部分のホルマント周波数の遷移:年齢が高くなるにつれて、遷移の幅が大きくなる傾向を認めた。正確な構音の獲得する過程を捉えられる可能性が示唆された。 この形式のデータ採取における問題点、または実験系の問題点がいくつか挙げられた。吶(サ行、タ行)の残る例があること、安定した音量を続けることの困難さなどである。実際には吶の影響の出にくい/panda/、/bas*/がサンプルとして適していた。今後のデータ採取においては、絵カードを利用するほかに、日常で頻用される/baibai/、/papa/などを加えるのがよいと考えた。 また実験系の不備の解消やデータ採取が遅れたため、ネットワークでの診断のための運用確認には至ることはできなかったが、修正を加えることにより実現に向かうことができると考えている。 なお母音部分の分析方法について、第48回日本音声言語医学会(つくば市)で口演し(題名:ささやき声における口唇破裂音の語音調節、当時の研究代表者、東川雅彦による)、さらに平成17年度の学術学会での発表の準備をすすめている。
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