視覚障害者のためのペン入力型ユビキタスインタフェースの開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15500401
• 研究機関: 独立行政法人国立高等専門学校機構熊本電波工業高等専門学校
• 研究代表者: 清田 公保 熊本電波工業高等専門学校, 情報通信工学科, 助教授 (80186353)
• 研究分担者: 江崎 修央 鳥羽商船高等専門学校, 制御情報工学科, 助手 (30311038) ; 合志 和洋 熊本電波工業高等専門学校, 情報通信工学科, 助教授 (20303711)
• キーワード: ペン入力 / 視覚障害者 / ユビキタス / ヒューマンコミュニケーション / コミュニケーションエイド / PDA / 感覚代行

研究概要

視覚障害者の情報機器利用の手段として、普段の筆記と同じ手法でコンピュータに日本語入力が可能なオンライン文字認識技術に注目し、視覚情報の欠如により筆跡のフィードバックなしで書かれた変形の大きな文字に対しても柔軟に対応可能な文字認識手法を提案している。本研究では、これまでの成果により得られた認識エンジンを基に、視覚障害者が屋外で利用可能な情報機器端末(PDA)を対象としたユビキタス(場所を選ばない)インタフェースの開発を行う。初年度は主として、これまで申請者らが開発してきたディスクトップ型コンピュータ用の視覚障害者用オンライン文字認識エンジンのPDAへの移植と視覚障害者向けのユビキタスインタフェースの基本設計思想を明確化した。従来の開発した文字認識エンジンでは97%以上の認識率が得られるまでに精度の向上を行ってきているが,この認識精度を維持しながら今回はPDAという非常にCPUパワーとメモリの制約条件が加わった中でのオンライン認識エンジンの実装が重要な課題の一つとなった。このため、PDA搭載用の辞書として従来のものをコンパクト化するとともに、単語レベルでの誤り訂正処理については処理時間を要するトライグラムの確率モデルに替えてバイグラムモデルを導入することにした。PDAに実装後の認識エンジンの認識率は,第1位で82.9%台、第3位までで89.4%台まで低下する傾向が見られた。誤認識の要因分析の結果、ペン先とタッチパネルまでの間隔が不明瞭なために、余分なストロークが加わったりする傾向があることが判明した。ディスクトップ版ではタブレットの位置が固定されていたために余り問題にならなかったが、携帯して利用するPDA等では筆記時の不安定さは無視できないため、今後検討を要する課題である。また、ディスクトップ用に開発したコマンド入力用のハンドコントローラのボタン機能をPDA上に実装するために、基本的なコマンド操作は、PDA上のスライドボタンと新たに背面に設置した2つのコントロールボタンで、全ての機能の入力を可能にした。

研究成果

• [文献書誌] 江崎修央, 清田公保, 滝沢穂高, 山本眞司: "中途失明者のためのオンライン日本語入力システム"電子情報通信学会技術研究報告. WIT2002-7-70. 1-6 (2003)
• [文献書誌] K.Kiyota, N.Ezaki, H.Takizawa, S.Yamamoto: "Pen-based PDA System for blind Persons"Proc.of the 7^<th> World Multi conference on Systematics, Cybernetics and Informatics. Vol.1. 203-208 (2003)
• [文献書誌] K.Kiyota, N.Ezaki, H.Takizawa, S.Yamamoto: "A Circular Fasion Menu System based on Human Motor Control Knowledge for the Pen-based Computer"Human-Computer Interaction, Theory and Practice (Part II). Vol.2. 118-122 (2003)
• [文献書誌] N.Ezaki, K.Kiyota, H.Takizawa, S.Yamamoto: "Pen-based Ubiquitous Computing System for Visually Impaired Person"Human-Computer Interaction, Theory and Practice (Part II). Vol.2. 48-52 (2003)
• [文献書誌] 清田公保, 合志和洋, 江崎修央, 山本眞司: "中途失明者用日本語入力システムのPDAへの実装"熊本県産学官技術交流会講演論文集. 第18回. 86-87 (2004)