本年(平成15年)度は、2年間にわたる研究期間の初年度に当たり、まずラット対麻痺モデルの作製に主眼が置かれた。 そこで、1)大動脈閉塞によるラットの対麻痺モデル作製を行った。具体的には、下行大動脈にバルーン付きカテーテルを挿入・膨張させ、尾動脈血圧と下腿三頭筋の血流下降を確認し、脊髄血行の一時的遮断状態を作ることで対麻痺モデルの作製を行った。 2)対麻痺モデルラットとダミー手術ラット(コントロール)において以下の運動機能評価を行った。ビーム渡りテスト、パイプ渡りテスト、グリッドテスト、スリップテスト。その結果、ダミー手術ラットでは、いずれのテストにおいても手術前後で運動機能の低下は確認されなかったが、ラット対麻痺モデルでは、術後の明らかな運動機能の低下が確認され、有効な対麻痺モデルの作製が達成された。現状の問題点としては、この手法による麻痺が脊髄のどのレベルで生じているかに関して特定できない点にある。これに関しては今後、脊髄組織の病理学的観察が必要である。 3)本研究では、当初予定していた手法(脊髄血行路の結紮)による対麻痺モデルラットの作製には限界のあることを確認し、検討の末、上記の手法を採用することとした。したがって、当初予定していた腰髄レベルへの磁場刺激まで今年度中に行うことは出来なかった。さらに安定したモデル作製を行った後、検討する予定。 4)対麻痺の神経生理学的評価として経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(MEP:motor evoked potential)の計測をラット腓腹筋において試行している。術前から術中、術後にかけて測定する予定であるが、特に術中には麻酔薬によってはシナプス伝達の抑制が生じることもあるため、麻酔薬の選定が重要であり、現在検討中である。
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