ラットの実験モデル系を用い、昨年度に確立した大動脈での血流遮断手技を用い、磁気刺激による血流動態の変化、誘発電位の計測によって磁場の刺激群、対照群との間で比較実験を行い、阻血の影響に関し定量評価を試みた。 1.経頭蓋磁気刺激による皮質脊髄路機能計測 下行大動脈遮断は10分間行い、バルーンによる閉塞解除後血圧は5分から8分で初期値まで回復した。 10分間の下行大動脈遮断により閉塞中、運動誘発電位は完全に消失した。 10分間の下行大動脈遮断解除後、運動誘発電位は10分から12分で回復し始めた。 10分間の下行大動脈遮断後、回復した運動誘発電位の振幅は初期値と同等か小さい傾向にあった。 2.磁気刺激による脊髄阻血耐性の評価 脊髄血行を変化させる前と後に、経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(MEP:motor evoked potential)の計測をラット腓腹筋において行った。 実験群は遮断前に磁場刺激を加え、対照群は特に前処置を行わなかった。 TMSによるMEPは対照群、刺激群とも阻血中には消失し、阻血終了後は時間経過と共に回復するが、対照群は閉塞前よりMEPの振幅が低く、刺激群は閉塞前よりMEPの振幅が高い傾向で阻血前後の加算平均値のパーセンテージ比例では群間の有意差があった。 対照群と刺激群共に阻血終了後のMEPの潜時が阻血前より遅くなる傾向があった。 3.今後の展望 脊髄機能を経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(MEP)という手法でモニタする実験系が出来上がったので、阻血時間中ステロイドの持続点滴を行うといった治療的介入の効果を検証することも可能であろう。
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