今年度は、昨年度に引続き、運動学習領域における学習方略に関する研究、及び自己調整学習に関する文献のレビューを行った。今回のレビューにより、運動学習領域における自発的学習方略に関する研究の全てを網羅することができた。それらを見るかぎり、学習方略の背後にあるメタ認知の分析まで踏み込んだ研究は、ほとんどなされていないことが判明した。 次に、昨年度において自発的に用いられる運動学習方略の抽出をするために用いた系列運動課題に関し、最も適切な学習方法とはどのようなものであるのかについて実験的に検討した。その結果、初めに介入動作を伴わせながら動作の系列を記憶することに専念し、記憶が成立した後、その記憶に基づきながら調整練習法によって運動再生の練習を行うやり方が最善の練習法であることがわかった。 以上の結果に基づき、本研究の一連の実験の締めくくりとして、小学生と大学生を被験者として、自由に練習させる条件(自由練習条件)と、前述した最善の学習方法で練習するように指導された条件(指導練習条件)との比較を行った。その結果、小学生のみならず大学生においても、自由練習条件より指導練習条件の方が学習成績において優れていることがわかった。これらの結果は、小学生・大学生を問わず、運動技術の「学び方」についてのメタ認知が十分には確立していないことを示唆している。 従来、運動技術については、正しい運動遂行の仕方に関する研究を中心にすすめられてきた。しかし、今回の結果は、正しい運動技術の遂行の仕方を、どのようにすれば効率的に獲得できるのかという問題について研究する必要があることを示唆している。
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