健康な大学生(男女各15名)と5〜6歳の幼児(男子20名、女子11名)を対象に、床振動時の姿勢制御の自動化に伴う手指運動の並行制御能の変化を検討した。 床振動台に搭載した床反力計上で立位姿勢を保持させ、ゴーグル型ディスプレイを装着した。床振動は、振幅2.5cm、周波数0.5Hzでのsin波状の前後移動とした。ディスプレイ上に標的光源を提示し、周波数0.3Hzでsin波状に水平に移動させた。手指運動は、直線型ポテンシオメータの左右方向の操作とし、その出力でディスプレイ上の追従光源を移動させた。標的光源の視角は20度(左右各10度)とし、これに対応する手指の移動距離は大学生では15cm、幼児では7cmとした。 手指運動の練習の後、床反力計上で立位での測定を行った。手指運動のみの測定を1回行い(コントロール)、その後床振動を6回負荷した。第1と第6試行では手指運動を並行させた。第2〜5試行は閉眼で行った。1試行は1分とした。足圧中心動揺の平均速度、標的光源と追従光源の位置の相互相関係数を算出し、次の結果を得た。 足圧中心動揺の平均速度は、大学生と幼児ともに、第3試行まで大きく減少し、第4と第5試行では殆ど変化がなかった。第6試行の平均速度は、第5試行に比べて、大学生では男女ともに有意に増加した。幼児では、男子のみが有意に増加した。標的光源と追従光源の位置の相互相関係数は、大学生では男女とも第1試行がコントロールと第6試行に比べて有意に低かった。コントロールと第6試行では有意差がなかった。幼児の相互相関係数は、コントロール>第6試行>第1試行の順に高く、全ての試行間に有意差が認められた、これらの結果は、成人と幼児において、動的姿勢制御の自動化に伴い手指運動の並行制御能が向上すること、幼児におけるその向上は、成人に比べて低く、かつその様相は男子で顕著であることを示すものと考えられた。
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