本研究は1920年から1945年までの近代日本における心身の一体化を歴史的に研究したものである。当時の人々が心身の一体化についてどのように考えていたのかを明らかにするために、様々な人物によって書かれた多くの言説を検討した。本研究では心身の一体化に関する9人の言説を使用した。その9人とは、北一輝、藤村トヨ、藤田霊斉、多田政一、木下竹次、後藤新平、三橋喜久雄、渡部政盛、篠原助市である。 分析の結果は以下のようにまとめられる。 心身の一体化の取り扱いに関して、9人の言説にはわずかな違いがあったと思われる。おおよそ言説は3つのパターンに分けられる。第一に、心身の一体化とは精神を鍛えるために身体の存在と機能の助力を必要とすることを意味していた。このパターンは、1920年代に多かった。第二に、心身の一体化とは身体を鍛えるために精神の助力を必要とすることを意味していた。このパターンは、1940年代に多かった。第三に、心身の一体化とは身体が精神と溶け合ってしまうようなエクスタシー状態を意味していた。このパターンの典型は、木下竹次であった。特に、体育・スポーツの場合を考えてみると、身体を鍛えるために精神の助力を必要とすることを意味していた。 この研究の今後の方向性は、心身の一体化がどのように実践されたのかを明らかにすることであろう。
|