研究概要 |
現行の学習指導要領では,体育において「体ほぐし」の運動が登場し,「心と体の密接な関連」が強調されたが,授業では何をどのように指導すれば「心身の関連」という理念を実現できるのかという戸惑いがあった.また「心と体を一体として捉える」「自分の仲間の体や心の状態に気付く」という場合の「捉える」「気付く」ということに関する哲学的問題の検討も不十分なままであった.そこで本研究では,「心と体」の問題が自己自身の存在への問いと不可分であるという立場から,「人間にとってのスポーツの普遍的意味とは何か」「スポーツの教育的価値とは何か」ということを考察することによって,体育が教材として用いるスポーツが人間の生の経験に対してどのような意味を持ち得るのかという哲学的な問題について検討した. 平成15年度は,わが国で明治時代から取り組まれている,心身の密接な関連における教育論から,われわれは何を学び得るのかということについて考察し,「心と体」の問題は自己自身の存在への問いと不可分であるという知見を得た.16年度は,スポーツにおける自己の達成は他者との連帯に発展する可能性を秘めていることを,大学の授業実践において実証した.また「心と体」に関する問題の調査を中国とドイツで行った.平成17年度は,前年度の授業実践を続け,スポーツにおける自己の達成は他者との連帯に発展することを明らかにした.本研究では,個人の達成の次元から捉えたスポーツの普遍的意味や,体育において「体をほぐすこと」や,そこでの「体への気付き」が人間の生の経験に対して持つ意義を多少なりとも明らかにすることができた.
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