筋線維組成(タイプ構成比)の分析は観血的手法が一般的であり、計測に伴う苦痛や危険は避けられない。そこで、これの無侵襲解析法を確立することは、スポーツのみならず、リハビリテーションや臨床現場において、画期的な支援の提供が期待される。本研究の目的は筋音図学的手法を用いて筋線維組成の無侵襲解析法を確立することである。昨年度までに我々は、筋線維組成が明らかに異なる腓腹筋とヒラメ筋におけるPost-activation potentiation (PAP)を筋音図(MMG)を用いて分析した。すなわち、PAPは速筋線維により顕著であることから、これを用いて筋線維組成比を評価することを試みた。その結果、MMGで評価されるPAPは一般に行われてきた力による評価よりも感度が高く、筋線維組成比の推定の可能性が推察された。 そこで、本年度は筋疾患により筋組成比が変性した患者のPAPを計測した。ここでは、臨床において行われたバイオプシーの結果(若干名)も合わせて検討した。その結果、筋線維組成の変性はMMG-PAPの値と一致した。この結果、MMG-PAPによる筋線維組成比の推定、および、これを用いた診断の可能性が示された。 さらに、本年度はワイヤー電極を用いた筋内電気刺激により、単一運動単位における波形の導出も試みた。ここでは、誘発されたMMGの筋線維タイプを識別することが必要である。来年度は誘発MMGの筋線維タイプ識別の検討を行う。
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