研究概要 |
一過性の筋力トレーニングに伴う同化ホルモンの分泌が筋機能の回復動態(実験1)および脂質代謝に及ぼす影響(実験2)を,2つの実験を通して検討した.まず実験1では,成人男性6名を対象に,同化ホルモンの分泌量が異なる2種の筋力トレーニング(SL法・MP法)を異なる日に実施し,運動直後における同化ホルモンの分泌量と運動後における筋機能の回復動態との関連性を検討した.次いで,実験2では,成人男性10名を対象に,筋力トレーニングに伴うGHの分泌増大が血中脂質濃度やその後に行う有酸素運動中の脂質代謝に及ぼす影響を検討した. 実験1では,運動後に血清GH濃度は,SL法がML法に比較して明らかに高値を示した.両試技ともに運動直後に最大筋力は同様に低下したが,その後,SL法においては速やかな回復がみられた(ρ<0.05).GHはタンパク合成を亢進させ,一過性の運動後における分泌量と長期のトレーニングに伴う筋肥大の程度との間には正の相関関係がみられることも報告されている(Goto et al.2005).したがって,SL法における筋機能の回復促進の一因として運動後におけるGHの分泌増大の関与が考えられた. 実験2では,運動直後にGH濃度の有意な増加がみられ,運動120分後に血清遊離脂肪酸(FFA)濃度は約2倍にまで上昇した(ρ<0.05).また,この際に,低強度での有酸素運動を60分間行わせた結果,血清FFA,グリセロールは増加し,これらの反応は同様の運動を単独で負荷した場合に比べて顕著なものであった.また,有酸素運動中のエネルギー供給に対する脂質の貢献度は,事前に筋力トレーニングを実施した試技において約10%高値を示した.これらのことから,筋力トレーニングに伴う同化ホルモン(GH)の分泌増大は脂質分解を亢進させ,その後に行う有酸素運動中の脂質分解および利用を増加させるものと考えられた.
|