研究概要 |
【研究目的】 動脈硬化をはじめとする成人病の一部は、小児期にその起源があると考えられている。 小児肥満も成人病の基盤となり、食事療法やスポーツ活動による体重管理を確立することが、成長過程にある小児期では重要になる。血管内皮機能や血管内皮・血小板相互作用は動脈硬化病変の進展に深く関わっているが、その小児期の成長に伴う変化やスポーツ活動に伴う変化は十分に解明されていない。 そこで、小児期から成人期に至る健常人を対象として血管内皮機能の指標となる血漿マーカーと血小板動態の食事運動介入に伴う変化を検討する。 【研究計画・方法】 16年度は、まず成人肥満を対象として、食事制限、好気的運動の介入に伴う身体的計測値、血小板活性、線溶系蛋白の変化を評価する。 【現在の進行状況】 1,活性化した血小板から産生される血小板由来マイクロパーティクル(PMP)、線溶系蛋白のtissue-type plasminogen activator(t-PA)やその阻害因子plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)は、非肥満群に比べ肥満群で高値で、肥満の程度や脂肪組織の量に正の相関を呈した。 2,3ヶ月間の食事制限のみの介入群と食事制限と好気的運動の介入群ともに十分な体重減少を認め、PMP、t-PA、PAI-1は減少した。それらの減少率は体重減少率と正の相関を認めた。好気的運動の有無は上記の血液学的変化に影響を示さなかった。 【今後期待される研究成果】 好気的運動は血小板凝集の抑制に作用する事が報告されているが、過度の運動は生体組織の低酸素状態を引き起こすと考えられ、低酸素に起因する血小板活性やPMP、線溶系蛋白等が血管内皮細胞障害や血管リモデリングへ関与する事が報告されている。食事や運動の介入における、これらの血液学的変化の解明は、小児期からその基盤が発症するとされる成人病の予防や治療に貢献すると考えられる。
|