最初の実験では成長や運動時の生体を染色し、筋組織を観察した。その結果、発育過程において染色液浸透の変化が観察された。とくに未熟な組織において、浸透液浸透の割り合いが高かった。このことは発育に伴い筋組織が完全に形成されるまでには相当な時間がかかることが判明した。二番目の実験では運動によって筋の肥大が観察され、その際、筋組織の崩壊像が観察された。その崩壊した組織の多くの筋細胞に染色液が浸透した。このように成長時や運動時では基本的に新たな組織を構築するために筋組織の崩壊が起るものと思われる。三番目の実験として肝幹細胞や骨髄幹細胞を採取し、運動負荷時、移植することによって、それらの幹細胞が既存の筋繊維の融合するのを検討するために行った。その結果、両幹細胞とも既存の細胞に融合している組織像を観察することができた。実際、運動負荷によって肝臓からの肝幹細胞の筋組織への移送の可能性を確認するために血中逸脱酵素と筋組織でのアルブミン陽性細胞、さらには血中でのアルブミン陽性細胞の有無について確認した。その結果、血中逸脱酵素GOTとALPは統計的に有意に増加した。しかしながら血中逸脱酵素GPTやγーGTPの変化については観察されなかった。これらの結果は骨格筋肥大に伴い肝機能に何らかの変化が存在したものと考えられるは、それぞれの逸脱酵素の挙動については今後検討する必要がある。また、筋組織内にアルブミン陽性細胞が多数存在することが確認された。また二重染色の結果アルブミン陽性細胞が筋分化転写因子であるマイオゲニンを発現している像が確認された。さらに、血液中にアルブミン陽性細胞が存在した。このことから肝臓から肝幹細胞が移送され骨格筋肥大に関与していることが強く示唆された。
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