研究概要 |
本研究の目的は,青年スポーツ選手の喫煙が呼吸循環機能に及ぼす影響を明らかにすることであった。本研究により得られた主な知見は以下のとおりである. 1.6日間の禁煙により心拍数は運動に適応して高まりやすくなり,かつ運動後に速やかに低下する傾向が示された。心拍数の運動への応答は副交感神経系の活性度の変化により改善されたものと考えられる。 2.喫煙者の心拍数は非喫煙者に比べて安静時・作業時そして回復時の全てにおいて高い傾向を示した。非喫煙者の副交感神経(HF)成分の水準は自転車作業後速やかな回復傾向を示した。一方、喫煙者のHF成分の水準は、作業後の回復の遅延傾向を示した。自転車作業後の乳酸値の回復傾向においても喫煙者は非喫煙者に比べて遅延傾向を示した。自転車作業後の血糖値は喫煙者の方が減少の程度が大きい傾向が示された。喫煙は運動選手の心拍数調節能のみならず、筋の酸素消費にも影響していることが推察された。 3.禁煙前の最大作業後10分後からの心拍数の低下とHFの高進の状態は喫煙による副交感神経の応答の低さであると考えられる。禁煙後の乳酸値は禁煙前の乳酸値に較べて低下現象を示した。禁煙後の作業直後の血圧は禁煙前の血圧に較べて低値を示したが,回復期の血圧は高くなる傾向を示した。RPEの指標は嘔気に関する指標としてよく対応していた。被験者は血糖値の低下時においても糖分を含まないナチュラル水を欲した。 以上のことから,喫煙は青年期のスポーツ選手の自律神経調節能に悪影響を及ぼしているが,禁煙により運動とその回復に対して速やかに反応するように改善されることがわかった.
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