立位姿勢保持時に前方への不平衡を引き起こすような上肢運動では、上肢運動の主動筋に先行して、体幹や下肢の姿勢調節に関わる姿勢筋が活動を開始することが古くから知られている。先行研究により、運動開始のタイミングの予測が容易で姿勢制御の準備が十分な場合には、姿勢筋の先行活動が出現しやすいと考えられる。 反応刺激タイミングの不確実さと誘発脳電位との関係については、聴覚刺激にてオドボール課題を実施した場合の事象関連電位(P300)によって分析した。さらに、予告信号から反応開始信号までの準備時間の異なる上肢屈曲運動反応課題を実施し、脳波の随伴性陰性変動(CNV)を分析した。 P300の振幅は、刺激提示確率15%では、45%に比べて有意に大きかった。音刺激から三角筋の筋活動開始までの反応時間は、15%条件に比べて、45%条件の方が有意に早かった。三角筋に対する姿勢筋の潜時は、脊柱起立筋と腓腹筋の活動開始が15%条件に比べて45%条件において有意に早かった。2条件の反応課題におけるP300振幅と姿勢筋の潜時との相関については、最も早く開始した姿勢筋および脊柱起立筋との間に有意な負の相関が認められた。 準備時間が3.5sにおけるCNV後期成分の積分値と傾きは、準備時間が2.0sにおけるそれよりも有意に小さかった。腓腹筋において三角筋に先行する活動は、準備時間3.5sにおいて3.0sのときよりも早期に開始した。CNV後期成分の積分値と腓腹筋の活動開始タイミングには有意な相関が認められた。
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