文部省(現文部科学省)が平成12年9月に公表した「スポーツ振興基本計画」と政府が平成14年8月に公布した「健康増進法」とその推進目標・推進計画を示した「健康日本21」の政策ビジョンは、地方自治体が推進の大きな役割であることを明示した。これにともない全国的に新しい健康・スポーツ団体の組織化が相次いだ。たとえば、スポーツ振興基本計画において国民の運動・スポーツ活動の参加率の向上を目指すために推進されている総合型地域スポーツクラブの設立は筆者らの調査によれば、平成17年3月末、全国で1882のクラブが設立および設立準備中であることがわかった。一方、健康・スポーツ系NPO法人は平成17年9月末、全国で1945のNPO法人が認証・申請中であることがわかった。さらに、健康・スポーツ系NPO法人1945のうち総合型地域スポーツクラブは全国で328にのぼることがわかった。これらの数値があらわすように健康・スポーツ系NPO法人とNPO法人の総合型地域スポーツクラブは、地方自治体が健康・スポーツ分野の公共サービスを立案・企画・実施する際に必要となる協働団体である。筆者の研究計画は三つの段階にわかれる。これまで二つの段階が終了した。一つ目の段階は、健康・スポーツ系NPO法人の雇用創出とその社会的効果の調査研究である。NPO法人の有給スタッフの雇用確保が、NPO法人の運営と事業を安定化させていることを明らかにしてきた。また有給スタッフが専門的資質を確保して、地方自治体の事業の立案や計画段階から能力を発揮できる効果を見出した。二つ目の段階は、有給スタッフの雇用を確保するための社会的・財政的な支援策の構築である。有給スタッフの雇用確保には、地方自治体から安定的に事業を受託できること、また、事業計画段階から企画を立案していく専門的能力をスタッフがもつことなどがあげられた。とくに、有給スタッフのヒヤリング調査では、対象となった有給スタッフの約8割が地方自治体との協働事業化を実現していくことが健康・スポーツ系NPO法人に対する社会的・財政的支援として重要であることがわかった。
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