5' AMP-activated protein kinase(AMPK)は筋収縮や低酸素負荷、酸化的リン酸化などの代謝ストレスに反応して活性化され、糖輸送や脂肪酸酸化、インスリン感受性亢進などの代謝調節に関与するものと考えられている。骨格筋にはα1、α2の2種類のcatalytic subunitが発現しているが、本研究では、2種類のアイソフォームが異なった活性調節を受けるメカニズムを検討し、酸化ストレスがα1を選択的に活性化することを明らかにした。また、酸化ストレスによるα1の活性化が細胞内AMPの増加を必要としないこと、α1活性化に伴って糖輸送やacetyl CoA carboxylase(ACC)のリン酸化が誘導されることを示した。また、従来は、α2が筋収縮時に優先的に活性化を受けるものと考えられてきたが、本研究では、筋収縮に最初に反応するアイソフォームがα1であり、その活性化はAMPの低下が生じない低強度収縮でも惹起されることを明らかにした。さらに、α2は高強度の運動によってAMP濃度依存性に活性化されること、α1、α2ともに糖輸送促進やACCをリン酸化を誘導することを示した。こうしてα2が筋細胞のエネルギー状態低下に反応して活性化を受ける一方で、α1はエネルギー状態の変化だけではなく細胞内に惹起される酸化ストレスに反応すること、AMPKの活性化は、α1、α2どちらであっても、筋細胞における糖利用促進や脂肪酸酸化亢進に関与することが示唆された。さらに、脂肪由来因子レプチンによるAMPK活性化とインスリン感受性との関連について、血中レプチン値の高いレプチン大量発現マウス(LepTg)を用いて検討した。LepTgは対象に比してインスリン感受性の亢進を認めた、筋のAMPKリン酸化も顕著に亢進していた。またLepTgを高脂肪食を与えて飼育するとインスリン感受性が低下したが、このときAMPKリン酸化も並行して減少した。この結果は骨格筋のAMPK活性とインスリン感受性との密接な関連を示すものである。
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