最適な競技パフォーマンスを発揮する上で、覚醒水準とそれを支える注意メカニズムを明らかにすることはスポーツ科学だけでなく、認知心理学においても重要な課題である。 15年度の研究では、特に至適運動量と注意能力に関する文献学的検討ならびに注意機能とパフォーマンスとの関連を健康法として近年注目されている太極拳を用いP300などの事象関連電位の側面から基礎的な実験を行った。次のような結果を得た。 ・運動強度の異なる24式太極拳と揚式太極拳とに共通する現象として、左側において脳波のβ波の増加と前頭部からのP300潜時の短縮と振幅の増大が顕著であった。 16年度の研究では、(1)動作タイプ・特性と注意機能を反映するP300、CNV等の誘発電位から注思機能をとらえ、(2)注意と身体知覚の変容と認知機能との関係について、SEP等の誘発電位やα波などの脳波成分から検証することを試みた。その結果、特に興味ある知見として、注意条件では体知覚の変容が見いだされ、部位の過大評価傾向が顕著であり、SEPの振幅と正の相関が見いだされた。 これらの結果は、運動と注意機能を中心とした認知機能との関連性を明らかにするとともに、そのメカニズムとして注意容量には限界があるが、配分に関しては運動動作特性によって異なることを示すものである。
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