研究課題/領域番号 |
15500449
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
二川 健 徳島大学, 医学部, 助教授 (20263824)
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研究分担者 |
安井 夏生 徳島大学, 医学部, 教授 (00157984)
中屋 豊 徳島大学, 医学部, 教授 (50136222)
岸 恭一 徳島大学, 医学部, 教授 (80035435)
西良 浩一 徳島大学, 医学部, 講師 (10304528)
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キーワード | ユビチキンリガーゼ / インスリン / インスリン様増殖因子 / Unloading / 筋萎縮 |
研究概要 |
運動トレーニングを長期間休止したり、寝たきりの人の筋肉は萎縮する。これは、運動不足や寝たきりなどの機械的ストレスの減少を筋細胞自身が感知し、増殖因子への筋細胞の感受性を低下させているためと考えられる。申請者らは、本研究を通し、筋肉の低活動状態(Unloading)による筋萎縮の原因遺伝子の一つをほぼ同定した。まず、宇宙開発事業団との「無重力による筋萎縮のメカニズム」に関する共同研究で、無重力により萎縮したラット骨格筋ではCbl-b (Casitas B-lineage lymphoma-b)と呼ばれるユビキチン連結酵素が著明に活性化していることを見出した。Cbl-bは、EGF (Epidermal growth factor)やインスリン/インスリン様増殖因子(IGF-1)の細胞内情報伝達分子をユビキチン化し、プロテアソームによる分解を亢進する酵素である。そこで、Cbl-bを強発現した筋芽細胞はインスリン/IGF-1の細胞内伝達物質のひとつがこのユビキチンリガーゼにより分解されるため、インスリン/IGF-1による増殖刺激に反応しないことを明らかにした。さらに、Cbl-bをin vivoでラット骨格筋に発現させると、筋線維サイズの減少(筋萎縮)を誘導した。一方、Cbl-b遺伝子欠損マウスは、尾部懸垂による増殖因子に対する抵抗性も筋萎縮もまったく起こらなかった。以上の結果より、Unloadingにより発現の増大した筋肉内のCbl-bが、筋細胞の増殖因子に対する抵抗性を誘導し、その結果筋萎縮が誘導されることが強く示唆された。運動療法が糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善することはよく知られている。本研究の結果は、Unloadingによる筋組織のインスリン/IGF-1抵抗性の発症機序を解明し、運動とインスリン抵抗性を分子レベルで始めて結びつけた画期的な研究成果である。今後、筋萎縮の原因酵素であるユビキチンリガーゼCbl-bの阻害剤を開発することによりUnloadingによる筋萎縮の予防方法も開発する予定である。
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