日本各地において行われてきた伝統的な打球戯の形態とその変遷を、スポーツ史研究の立場から明らかにすることを目的とした本研究において、平成15年度は、初年度として、「打毬」を中心に現地調査を行い、文書史料の収集と実態の調査を行った。また、「打毬」から生まれた「毬杖」は、薩摩の場合「ハマ投げ」という名称の遊戯として行われてきたが、本研究では、この薩摩の「ハマ投げ」についても調査・資料収集を行った。 薩摩の「ハマ投げ」は、薩摩藩に固有の教育組織であった「郷中教育」において、藩の子弟の遊戯として盛んに行われていた。その「郷中教育」の思想と形態は、明治維新の後も「学舎」の教育として受け継がれた。鹿児島の将来を担う青少年の育成の必要性を訴えた「郷中教育」出身者ら有志によって創設された「学舎」では、学習(読書・討論など)と運動(相撲や遊戯など)を日課として、青少年の心身の錬成が行われた。運動においては精神を鍛錬することが重視されていたが、その運動のなかで、「ハマ投げ」は、薩摩の勇壮な精神を伝える遊戯として、特に冬季に盛んに行われていたのであった。現在鹿児島市では、学舎連合会によって、この遊戯の保存会が運営されている。このように、薩摩の「ハマ投げ」が、現代の鹿児島における青少年の教育に受け継がれている伝統的な教育形態のなかで行われてきたということは、スポーツ史上注目される。 本研究の収集成果は、情報として蓄積し、研究代表者・研究分担者間で整理・検討した。また、国内の学会等の機会を利用して、スポーツ史研究者の間で情報・意見交換を行った。
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