研究概要 |
本研究では、成年男性の協力を得て、種々の運動強度の定量的運動(局所および全身負荷反復運動)を行ない、運動中および疲労困憊にならしめた後の休息期間における種々の生理学的因子、血液中乳酸濃度、尿NOx、尿重炭酸イオン、尿pHの経時的な変動について詳しく分析を行った。さらにグーリングダウン運動を導入することにより、これらの因子がどのように変動するかを詳しく検討した,その結果をもとに、血液中のNOおよび重炭酸イオンの動態や血液pH,赤血球pHの変動を推測するとともに、これらの因子のもつ生理的意義と運動医学における意義とを検討した。その結果、重炭酸イオンは運動終了後の休息期間薬3時間以内に尿中に高濃度に蓄積することが明らかとなった。同時に尿pHは著しくアルカリ化した。これらの結果は血液中に蓄積した乳酸が生体酸化により炭酸ガスへと代謝されたのち、血液中で重炭酸イオンが大量に産生され、さらに尿へと排泄されたことを示していた。また、これらの反応が進行した結果、赤血球中には大量の水素イオンが蓄積し、赤血球ヘモグロビンの酸素結合能を低下させ、全身的なチアノーゼを引き起こすことが考えられた。このようなプロセスが激しい運動後の疲労と関連していることが示唆された。クーリングダウン運動を導入すると尿へはほとんと重炭酸イオンは排泄されず、生体内の生理的環境は大きく改善し、疲労の蓄積が少ないことが明らかとなった。本研究により、激しい運動後の疲労因子として赤血球細胞内pHの低下が大きいこと、また赤血球細胞内pHの変動を推定するうえで尿重炭酸イオンの測定が容易かつ重要であることが明らかとなった。
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