本研究では、スポーツに関するNPOに着目し、わが国のNPOの成立過程を踏まえて、その成立過程を明らかにするとともに、スポーツ界の構造変動の社会的条件とそれぞれの下位「場」の再生産戦略と象徴闘争を視座に入れつつ、スポーツに関するNPOを機軸としてスポーツ「場」全体の構造変動を総合的にとらえることで、我が国のスポーツに関する文化的再生産の様相とそのダイナミズム、スポーツに関するNPOを中心としたボランタリーセクションの可能性と今後の方向性に関して総合的に検討することを目的として研究を進める。そこで、本年度は、この目的の達成のために以下の下位目的を設定して研究を進めた。 1)スポーツに関するNPOと行政及び各スポーツ関係団体の関係性をめぐる事例調査(調査:1) 本調査では、わが国におけるスポーツに関するNPOの成立と行政及び各スポーツ関係団体の受け止め方と関係性に関して、スポーツに関するNPOと各スポーツ関係団体の事例調査を実施し、スポーツNPOと行政及び各スポーツ団体の関係性と位置づけをめぐる変容過程について検討を行った。 事例調査において、行政との連携を模索するスポーツNPOにおいては、行政の信頼の獲得の困難さと住民力の形成過程にみる行政との協働と正統性の獲得過程が明らかにされたとともに、行政内部におけるNPOとの協働関係形成における対応の難しさと揺らぎが検討された。 2)スポーツに関するNPOの設立、活動状況、再生産戦略に関する調査について(調査:2) 本調査については、調査枠組みと作業仮説の設定、調査デザイン及び調査用紙の作成のために昨年度に引き続き検討会を行った。調査内容については、(1)社会的属性および団体内での役割、(2)所属団体の基本的特徴、(3)所属団体の教育戦略、対人戦略、象徴戦略、物的・財政的戦略などにみる再生産戦略、(4)所属団体と他の団体との関係性、(5)今後の活動展開の方向性等を設定し、全国のNPO法人格を有するスポーツNPOの500団体を対象としてアンケートによる社会調査を実施し、調査用紙の配布、回収を行った。回収については18年度に入ってからも継続して行う予定であり、回収された調査用紙から順次データの打ち込みを行い、18年度にその調査結果からスポーツNPOの設立、活動状況、再生産戦略等の特徴と諸相について詳細に検討する。
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