研究概要 |
目的 我々は,先行研究において運動性無月経(EAA)の選手では正常性周期の選手に比べて反応性充血時の血管拡張反応(Flow-mediated vasodilatation : FMD)が低下しており,FMDは血中エストラジオール濃度(E3)と正の相関を持つことを見出した.E3の低下と血管内皮機能低下の因果関係をさらに明確にするために本研究では前向き研究を行った。すなわち、EAAの選手が正常性周期に回復した時点で,血中E3が正常化し,EAAの治癒にともないFMDが回復するかどうかを検討した.さらに、今年度は、対象群として、運動を行っていない女子(同年代)について同様の測定を行った。 研究の対象: 全国大会レベルの某高等学校女子バレーボール選手、運動をしていない女子 測定項目: 1)身体組成:身長、体重、Body Mass Index、体脂肪率 2)血液検査:総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、E3、プロゲステロン 3)血管内皮依存性血管拡張反応:FMD 4)血管内皮非依存性血管拡張反応:ニトログリセリン(GTN)に対する血管拡張反応 先行研究で運動性無月経群から7名について、競技的なスポーツ活動を中止し6ヶ月後の時点でfollow upの測定を行った。 結果 EAAでは対照群に比較し、FMDとGTNに対する血管拡張反応、E3が有意に低下していた。Follow up時点では全員が正常性周期に回復しており、EAA時に比べて、E3は有意に増加し、それに伴ってFMDとGTNに対する血管拡張反応も有意に増加した。 結語 EAAでは、E3の低下に伴って血管内皮依存性および非依存性血管拡張反応が低下していることが示された.若年齢において、しかし、トレーニング中止によって、血管機能の低下は改善することが確認され、可逆的な障害であると考えられた。無月経をきたすような激しい運動は、血管機能障害をきたす可能性があり、低エストロゲン状態が長期に続いた場合には運動機能の低下や動脈硬化の早期進行が危惧され、さらに長い経過を見る研究が必要である。
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