本研究は、エイズ教育の新たな局面に対応するために、(1)従来開発されているわが国や諸外国のエイズ教育のための教材・教異を分析・検討し、リスク認識形成のために教材・教具が具備すべき要因を解明するとともに、(2)わが国の児童・生徒のもつエイズに関するリスク認識の構造を調査で明らかにし、(3)調査で明らかとなった児童・生徒のリスク認識をふまえて、リスク認識の形成のための授業書の開発を行い、(4)その授業書の有効性を実験授業を通して実証的に明らかにすることで、エイズのリスク認識形成のための典型教材の創出を意図するものである。 そのため、わが国における健康教育とエイズ教育との関連やその必要性を検討するとともに、従来開発されているわが国や諸外国のエイズ教育の教材・教具を収集・分析を行い、欧米のエイズ教育が感染リスクの軽減という、確率論的発想にもとづくリスク概念で構成されていることを明らかにした。 また、中学生を対象にエイズに関する知識やリスク認識についての調査を質問紙法で実施した結果、自分がエイズに感染するかもしれないという罹患性の認識は、ガンより低く、結核よりも高かった。 それらの成果をふまえて、性的接触によるエイズ感染のリスク認識の形成をめざす授業書形式での教材モデル案を作成し、それにもとづき高等学校1年生を対象に実験授業を実施した。その結果、生徒のもつ感染リスク認識は授業の事前より直後及び事後に有意に増加した。この授業を授業記録にもとづき分析・検討して、授業書モデル案を修正し、その修正案を再度、中学校3年生を対象に実験授業を通して評価・検討し、その有効性を確認した。それに基づき再修正したものを最終案として報告書に提示した。
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