研究概要 |
1.脳性麻痺児の一定の筋出力発揮に関する調節安定性を評価するために、前年度試作したジョイスティック型測定装置を用い、被験者(脳性麻痺児3名、対照児3名)に最大および最大下(最大発揮筋力の20%から80%まで、20%毎)の等尺性肘関節伸展・屈曲動作を課し、課題遂行時の上腕二頭筋・三頭筋の筋電図(EMG)と筋音図(MMG)データから特性を検討した。対照とした障害のない被験者と比較して、脳性麻痺児の筋音の全パワーは低い傾向にあり、また課題強度の増加にともなう高周波数域でのパワースペクトルの増加分が少ないこと観察され、筋収縮の特性を評価する有効な指標となる可能性が考えられた。 2.自己の身体像と身体の動作可能性に関する自己認知度について、脳性麻痺児と骨形成不全症児を対象に書写による課題図形のトレース能力(微細)と車いすでのジグザグ走能力(粗大)とを比較した結果、両者は密接に関連しており、また脳性麻痺児においては障害の程度だけではなく、関係障害に起因すると思われる他の重複障害の影響も考慮する必要があると思われた。 3.さらに、体力と身体の動作可能性に関する自己認知度との関係について、老人保健施設に入所している67-88歳の虚弱高齢者15名(男性9,女性6)を対象に、最大等尺性膝関節伸展筋力・6m最大歩行速度とバーのまたぎ越しテストを行い、同年代の在宅高齢者と比較した。その結果、施設入所の虚弱高齢者では最大筋力・最大歩行速度が在宅高齢者より有意に低く、動作可能性に関する自己認知度の指標としたバーまたぎ越しの視認値と実際値との差が有意に大きくなることが認められ、身体活動量の低下にともない、体力だけではなく、動作可能性に関する自己認知度も低下する可能性が考えられた。 4.そこで、1名の脳性麻痺児を対象に、週1回1時間の車いす走行トレーニングを実施し、体力要素ならびに、上記1、2の測定項目に関する評価を定期的に行い、その変化のプロセスを現在、測定中である。最大筋力および一定筋出力時のパワースペクトル特性、動作可能性に関する自己認知度の変化等について今後さらに検討する予定である。
|