研究概要 |
片足立位時の姿勢維持メカニズムは,関節および筋骨格系からなる物理的な部分と末梢および中枢神経系からなる制御を担う部分とに分けて考えることができる.立位時の姿勢維持は最終的に足関節の制御によって行われ,足,足関節と下腿筋群間の関係を究明することは重要である.下腿筋のうち,特に前脛骨筋(TA),腓骨筋(長筋,短筋:PM)と下腿三頭筋(腓腹筋,ヒラメ筋:TS)は足関節の運動においてそれぞれ内反,外反と足底側への屈曲の役割を果している.しかし,立位時の足,足関節と下腿筋群からなる物理的な構成と床反力,筋力との動力学的な関係は未だ明らかにされていない.本実験では片足立位時の床反力と各筋の収縮との関係を分析して足,足関節と各筋力間のモデルを確立することを目的とした..被験者は健常者5人(男性2名,女性3名),平均年齢は32.0±13.4歳であった.被験者を左足,裸足で力センサシート(Fscan, Nitta, CO.Osaka)の上に立たせ,足裏の床反力と各筋肉の表面筋電図(surface EMG : sEMG)を同時に記録した.その結果:(1)足裏床反力の時系列変化の相関分析から独立的な三点の受力点が存在し(一つの鈍角三角形となる),それぞれ足裏の踵,前外側と前内側の部位に位置した;(2)床反力の圧力中心(Center of pressure : COP)の左右方向への移動加速度の変化はTAとPMの収縮と同期した.(3)TAの収縮はCOPの加速度を足裏の外側へ,PMの収縮はCOPの加速度を足裏の内側への移動をもたらした.これらの結果から,片足立位時,床反力は足裏接触面の三点のところに集約され,下腿部にある三組の筋の収縮によりこれらの三点の床反力を調節しCOPの制御を可能にしている.
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