生活習慣病の増加、低年齢発症化が指摘されるようになって久しい。われわれは、青年期、特に一人暮らしを始めることの多い大学生をターゲットにして、従来から施行している生活習慣病検診、2000年に開発したICカードを利用した健診を最大限生かす生活習慣病一次予防のシステム作りを行った。 大学生の健康に対する関心は就職、進学、バイト、部活への関心に比べて高くないが、多くは漠然とした健康不安を抱えており(46%)、情報を求めていることがわかった。 本研究の中で、以下のようないくつかのエビデンスを得た。1)青年期から内臓脂肪蓄積に伴い動脈硬化が始まっている実態、2)脂肪肝や高血圧は比較的早期に出現しやすく、約15%の学生に認められる、3)全体の0.6%に認められる耐糖能異常をHbA1cの組み合わせで効率よくスクリーニングする方法、4)女子学生の痩せ願望に基づく、ボディイメージと実体型のズレ、5)BMIと超音波骨密度の正相関(女)、などである。 これらのエビデンスも取り入れた健康教育、健診事後措置(「新入生健康セミナー」)を必修で行う取り組みを開始し、個別健診結果票を全員に配布し理解させる、さらにハイリスクグループには継続観察する体制を整えるような集団・個別アプローチシステムを構築した。現在開発中の縦断的観察向きの健康管理モニタリングソフトを用いて、健康作りの集団アプローチ開始前後2学年の2年間のBMIフォローアップスタディで、明確に体重適正化傾向がもたらされた。大学生へのしっかりとした集団・個別アプローチは、将来的に有意義である可能性が示唆された。 生活習慣病予防のための行動変容を促すような動機づけツールの開発までには至らなかったが、若年者においても普段から体重や血圧を測る習慣を付けることが、健康作りに大切であることがわかった。この健康作りシステムの中で次に目指すのは、若年者行動変容の成功、失敗、維持、リバウンドなどのプロセス分析に基づく、保健指導の在り方のスキルアップである。
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