本研究は肥満小児40名を対象に食事療法と運動療法(以下減量プログラム)を実施し、その前後で形態、体力およびメタボリックなファクターに対する影響を検討した。減量プログラムにより、対象児の体重、肥満度は有意に改善し、除脂肪体重に有意差は認められなかった。皮下脂肪面積は250.6→138.8cm^2へ、内臓脂肪面積は50.5→32.4cm^2へ有意に減少し、腹部脂肪分布の適正化が認められた。経口糖負荷試験より求めた総インスリン面積は減量プログラム後、有意に減少し、インスリン抵抗性の改善が認められた。これらの変化量と内臓脂肪面積の変化量との関連を検討した結果、肥満男児ではr=0.743の強い相関関係が認められ、内臓脂肪の蓄積がインスリン抵抗性をもたらすことが示唆されたが、肥満女児では関連が認められなかった。脂肪細胞由来の生理活性物質であるレプチン、高感度CRPは減量後、有意に減少、アディポネクチンは増加した。特に将来の動脈硬化予防と関与するアディポネクチン値の増加は内臓脂肪の減少量と有意に相関しており、内臓脂肪を減少させることの意義が示唆された。このように肥満の程度、内臓脂肪等の減少に伴い、各種代謝異常も改善し、メタボリックシンドローム(以下MS)の出現頻度は減量前15.3%であったものが、減量プログラム後には2.5%へと減少した。持久性体力の指標であるPWC150、Vo_2maxは減少プログラム後、有意に増大した。MSの各コンポーネントと持久性体力との関連を検討するため、PWC150を用いて重回帰分析を行ったところ、PWC150の変化量は肥満度や、腹部脂肪分布の変化量と独立して収縮期血圧、HDL-Cと関連しており、肥満小児の減量において食事療法だけではなく、運動療法を併用することのMSへの意義が示唆された。
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