研究概要 |
本研究は農山村地域の高齢者に対して健康増進と自立支援を目的に,運動習慣の確立を中心とした介入を次の二つの対象に対して行った.まず,寝たきりの要因として最も大きな脳血管障害(CVD)の慢性期に入った中等度患者7名を対象として,主に水中運動を中心とした個別指導と集団指導を組み合わせた機能回復訓練を,週1回の頻度で2年間継続して実施した.その結果は,関節拘縮に影響される柔軟性の向上,筋力の回復やそれに伴う神経筋協応能の改善が統計的に有意に認められた.また,日常生活の中での階段昇降の改善も認められ,生きがい感の向上や健康不安の軽減が示めされ,QOLを高める効果があったことが示唆された.自立支援効果が十分に得られたと考えられる. 他方の介入は,生活習慣病の予兆(危険因子)を保有する高齢女性(65〜76歳,介入群34名,対照群30名)を対象に,各自に適切な運動処方および栄養指導を行い,それを日常生活の中で行うように支援していくことで,健康増進効果(危険因子の病態の改善や身体機能の向上)を上げようというねらいであった.介入(支援)期間は2年間であり,その間の変化を対照群と比較しながら効果を検証した。その結果,対照群では認められない高血圧(収縮期血圧の6mmHgの有意な低下),高脂血症(総コレステロールの4mg/dlの有意な低下,中性脂肪の14mg/dlの有意な低下,HDLコレステロールの9mg/dlの有意な増加),高血糖(HbA1cの0.3%の有意な低下)の危険因子を軽減できることが立証された.また,身体機能(歩行能力・手腕作業能力・身辺作業能力・座位体前屈・反復横跳び・踏み台昇降運動による最大酸素摂取量の推定値)の有意な向上が期待できることが立証された,それを裏付ける日常活動量(一日総歩数の1300歩の有意な増加)の増加が認められた.運動を中核とした生活習慣の行動変容支援によって健康増進効果が十分に認められたと考えられる.
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