研究概要 |
運動が唾液中分泌性免疫グロブリンA(sIgA)とリゾチーム濃度に及ぼす影響とsIgAおよびリゾチーム濃度と上気道感染症との関連を検討し、スポーツ選手の身体コンディションの自己評価への応用を試みた。 1.運動が唾液中sIgAとリゾチーム濃度に及ぼす影響 (1)一過性運動が唾液中sIgA濃度に及ぼす影響 60%VO2max強度のトレッドミル走行直後には、運動負荷前に比べ有意に高値であった(p<0,05)。 (2)一過性運動が唾液中リゾチーム濃度に及ぼす影響 40%、60%および80%VO2max強度のトレッドミル走行直後には、運動負荷前に比べ有意に高値であった(p<0.05)。 (3)8週間の運動トレーニングが唾液中sIgA濃度に及ぼす影響 トレーニング開始2および3週目に有意な減少がみられた(p<0.05)。4週目以降は増加傾向がみられたが、有意な増加ではなかった。 (4)8週間の運動トレーニングが唾液中リゾチーム濃度に及ぼす影響 トレーニングの進行とともに増加傾向にあったが有意な増加ではなかった。 2.唾液中sIgAおよびリゾチーム濃度と上気道感染症との関連 (1)上気道感染と唾液中sIgA濃度 上気道感染発症の確率は、sIgA濃度が85μg/ml未満では66.7%、85μg/ml以上では39,5%で、85μg/ml未満時の上気道感染リスクは3.07倍で有意に高かった(p<0.05)。 (2)上気道感染と唾液中リゾチーム濃度 上気道感染発症の確率は、リゾチーム濃度が3.5μg/ml未満では72.2%、3.5μg/ml以上では40.9%で、3.5μg/ml未満時の上気道感染リスクは3.46倍で、有意に高かった。 3.身体コンディションの自己評価への応用 定期的に唾液中sIgAあるいはリゾチーム濃度をモニターすることによって、上気道感染の危険性を予知し、スポーツ選手の良好なコンディション作りに寄与できることが明らかになった。
|