運動中の頚動脈、上腕動脈、大腿動脈の血流速度が同時に計測できる機器の開発を試みた。運動中の超音波ドップラ法よる血流速度の測定では、安静時での測定と比べて、プローブの慣性雑音、血管位置の移動および筋収縮に伴う雑音の混入などの問題点を解決した機器の改良開発が必須となる。 本年は、1)姿勢変化に伴う血管位置の移動量の計測、2)運動中の血流速度計測に適した血管部位の同定、3)自己開発した超音波プローブの音場分布のシミュレーション、4)運動療法を必要とする高齢者にも使い易い小型で軽量化な発信、受信機のIC化を目指して機器の開発を試みた。 結果は、1)人体の動脈血管の位置ずれは、総頚動脈では、左右で25mm、深さで9mm、上腕動脈で左20mm、深さ13mm、大腿動脈で左右29mm、深さ8mmの最大移動が認められた。2)位置移動は最適な血管部位に半円形プローブを2個を組み合わせ、送信と受信を広いビーム幅の連続波を用いることで解決できる。3)左右上下の血管移動に対応するためには超音波プローブの流速分布波形を考慮すれば解決できることが判った。4)IC化に向けて、まず、発振回路には無調整水晶発振回路を、検波回路にはギルバートセル型検波復調回路と2次バタワースバンドパスフィルターを用いて、改良型のドプラ識別回路を試作した。識別回路を試作した。次に、IC化フィルター回路とギルバート型乗算回路を用いることで可能となるが、増幅・出力回路と正弦波発振回路の困難な点を抱えているのでこの点が今後の課題である。 次に、超音波ドップラー血流速度と心電図のテレメトリー同時計測のシステムの開発のために、備品費で購入したベッドサイドモニターを用いて、研究代表者が被験者となり、中等度の強度の運動下で上腕動脈の血圧の変化と心電図の同時測定を行って、システム構築の可能性を確かめた。
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