近年、セルロース系織物の防しわ・防縮・形態安定を目的とするDP(Durable Press)加工において、従来のホルムアルデヒドの代替としてポリカルボン酸を架橋剤に用いることが検討されている。本研究の目的は、ポリカルボン酸系DP加工布の消費性能のうち、衣服管理において重要な、日常生活で発生する汚れの付着しやすさと家庭洗濯による汚れの除去されやすさについて検討することである。本研究の主な成果は次の通りである。 1.加工布の基本的性質 DP性能の尺度である防しわ性はポリカルボン酸の種類や触媒添加量によって変化し、こうした処理条件がセルロース分子間の架橋反応の程度を左右すること、加工に伴って布の黄変や疎水化が生じること、また、加工に際してポリカルボン酸とセルロースとの反応によって生成するエステル基の他に、この反応に与らないカルボキシル基が導入されることがわかった。 2.加工布の汚染性 加工により綿布は酸化鉄汚れが付着しやすくなった。とくにクエン酸で加工した綿布において汚染度の増大が著しく、布上のカルボキシル基量と汚染度との間に相関が認められた。カーボンブラック汚れや脂肪酸汚れによる実験から、汚れと繊維との組み合わせによっては加工による防汚効果が現れることがわかった。 3.加工布の洗浄性 加工布、とくにクエン酸で加工した綿布からの酸化鉄汚れの除去は、弱アルカリ性条件下や硬水中で未加工布よりも良好であり、布上のカルボキシル基の関与が示唆された。汚れと繊維との組み合わせや洗浄条件によっては、未加工布よりも汚れ除去が容易になることがわかった。
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