研究概要 |
衣類のドライクリーニングに使われる主要な溶媒はパークロロエチレン(PC)とハイドロカーボンである。PCは発癌性の疑い、大気汚染の危険性、オゾン層の破壊が問題となっている。ハイドロカーボンは、環境および安全性の面から機器設備の承認は確実ではない。そのため、溶剤の代替として水を用いる硬質表面の超音波洗浄過程に関する多くの研究がなされてきたが、水系超音波による繊維基質からの汚れ除去機構はほとんど解明されていない。環境によくない溶剤の代替として水を用いた衣類の超音波洗浄システムを確立することを目的として、繊維基質からの超音波による汚れ除去機構に関する研究がおこなわれた。布からの超音波による汚れ除去効果を評価するために試作超音波洗浄装置(周波数28kHez,1Wcm^<-2>)を用いて、ポリエステルあるいはセルロース織物基質のよごれの除去を、音圧、溶存酸素濃度および界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリコールモノドデシルエーテルC_<12>E_n)濃度の関数として検討した。油性よごれとしては、着色油性汚れSolvent Yellow 5,皮脂汚れ成分のトリオレイン、オレイン酸、スクアレン、コレステロール、ステアリン酸を用いた。油性よごれの除去率は、音圧の増加とともに増大し、音圧と除去率の間に正の勾配をもつ直線関係が得られた。水に界面活性剤を加えると(界面活性剤C_<12>E_nの臨界ミセル濃度)、ポリエステルからの油性よごれは90%以上の高い洗浄効率で除去された。超音波による油性汚れ除去の主要なメカニズムは、音圧、キャビテーション、繊維とよごれの親和力、界面活性剤の物理化学的作用であることが示された。
|